東京オリンピックと新幹線展はデザイン、大衆文化の展示として楽しい
・江戸東京博物館らしい、庶民の風俗に基づいた展示が楽しい
・東京オリンピックと新幹線0系は日本における"デザイン"の芽生えが見えるのでオススメ
つい先日、フォロワーさんに誘われて江戸東京博物館の「東京オリンピックと新幹線」展に行ってきた。
ポスターに強い興味を惹かれてツイートしたものの、誘ってもらわなければ忘れてたくらい最近忙しくて、つかの間の休息だった。
内容は3部構成。
戦後の復興期の日本の文化の説明
新幹線に関する記念品などの展示解説
復興期の日本の文化は、カストリ紙が何冊も展示してあったり、家電三種の神器が展示してあったり、歴史の資料集をめくるような楽しさがある。
最後のオリンピック・パラリンピックの展示でも言えることだけど、「当時、名もなき庶民の生活がどの様に変わっていったのか」を丁寧に追いかけている印象だった。
○○に尽力した人の展示は興味深くもあるけれど、有る程度資料も散逸せずに、体系だった記録を追いかける展示になりがちだ。
正直わざわざ入場料を払ってガラスの向こうの実物を眺めずとも、研究結果を纏めた本をいくつか読めば済む話だったりする。
庶民の歴史、当たり前のことはなかなか記録に残らない。
フロッピーやMDプレイヤーやストリップバーなんかが忘れ去られていくように、いつの間にか消えていく。
だから、東京オリンピックを機にゴミ出しの方法が変更となったことは貴重な記録だ。皆様お馴染みの「青い円筒状のポリバケツ」が路上に登場するのは、東京オリンピック直前以降である。
…ということとかが見えてなかなか楽しい。
イデオロギー抜きで庶民目線の展示を行えるのって、なかなか難しいことなんじゃないかな。なんて思う。
中学校の頃の社会科資料集を見るあのワクワク感をちょっぴり思い出させてくれる展示は魅力的でした。
そして、デザインのお話。
新幹線に関する展示は大衆風俗よりも、"日本における車両デザインの原点"と"技術者の叡智の結集"のような文脈が重視されている。
新幹線エリアの展示物自体は鉄道系の博物館に何回か行っていれば見たことがあるような…ごにょごにょ、みたいなものが多い。記念品とか、雑誌の切り抜きとか。
注目は、新幹線の車両デザインに関する展示。特急車や寝台車なんかより更にワンランク上、夢の超特急に相応しいデザインとは何か。
鉄道車両において"デザイン"が意識されるとても貴重なタイミングだった。
最近はJR九州の車両を手掛ける、水戸岡氏のインタビューがテレビで流されたりして、"鉄道車両のインテリア・エクステリアデザイン"がマニア以外の人達にも意識されるようになったと思う。その原点をこの展示でじっくりと見ることができる。
0系新幹線は超高速度運転のためにシステムやメカニックの技術を大きく発展させた。
だけでなく、それをインテリアの部分からサポートするトータルデザインが必要なものとされ、実際の車両に組み込まれた。
豪華で煌びやかなものではなく、5年という超短期計画の中で、あくまで新幹線の速達性を助けるためのデザイン。その当たり前をデザインすることの意味が、関係者の言葉や図面を通して伝わってくるようだった。
……で、新幹線だけならこんな記事はかかない。展示の中で詳しくは述べられていないけれど、東京オリンピックは日本におけるサインシステムの原点だ。
言語が通じなくても、下地となる文化が異なっても、共通言語として存在するサインシステム。
見やすさ、分かりやすさを手探りで追求した、デザインの実験場でもあった東京オリンピックの姿を実感出来る展示が、最後の東京オリンピック・パラリンピックコーナーには詰まっている。
「戦後のニッポンに希望を与えた新幹線、オリンピック」ではなく、「戦後デザイン黎明期における試行錯誤の跡」として、ぜひ楽しんで見て欲しい。
で、興味をもったらこの本を読んでみてほしい。
- 作者: 赤瀬達三
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 2013/09/11
- メディア: 単行本
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営団地下鉄のサインシステム計画学 などに携わった赤瀬氏による、サインの研究本。東京オリンピックや大阪万博におけるサインの歴史から、営団サインについてなど。
お高いしとっつきにくく思えるけど、デザイン・サイン・公共スペースなんかに興味があればぶっちぎりのオススメです。
そんな堅苦しいことが言いたいんじゃなくて、デザインって面白いよねっていうのを共有したいだけだったような気もします。
それでは。